世の中なんて、パッと変わる、そういう時代なんだ

「世の中なんて、パッと変わる」昔、こんなキャッチフレーズを見た気がします。今の時代の気分だなあ、と記憶が蘇りました。
今日はコピー談義ではなく、マーケティングセンスの話です。
マーケティングセンスのない奴ってどうしようもない。とか、マーケティングセンスって何だろう、そんな話を時々耳にします。
私には、ズバリではないけど、この「世の中なんて、パッと変わる」という気持ちや意識がそれに近く、重要な要素のひとつという気がします。
生きている限り、次の瞬間に何が起きても不思議ではない、ということですね。いいことも、悪いことも、です。
先日、ラグビーのワールドカップで日本が南アフリカに勝ちました。劇的な勝利でした。以来、日本ではラグビー人気が続いています。高校生の時に、ヘボではありましたが、私はラグビー部に所属していましたので、それ以来、半世紀に及ぶラグビーファンです。まさか、生きているうちにこんな日がやって来るとは、まるで夢を見ているようでした。
これは、パッと変わった、いい例です。もちろん反面、あの3・11に代表される悲惨で忘れられない変転の一瞬もありますが、「パッと変わる」という点では真実です。
世の中は、毎日変わらず、平和で緩慢に動いているように見えていて、時折、情勢が一変する。良くも悪くも、そういう一瞬がある、ということですね。
ここで話を戻すと、変わらないものなんて世の中にはない、という意識。変わるなら、変えられるだろう、という思い。私がマーケティングセンスと言っている根っこはここにあります。
何が起きても不思議ではなく、変わっていくことこそが世の中の真実であるなら、当たり前のことや常識が、あっという間にくつがえされて、新しい当たり前が生まれても、それはごく普通のことである。
この価値観、思い込み、基準が、マーケティングセンスなのです。
こう思っている人には、知らず知らずのうちに、ビジネスの常識を塗り替えよう、世の中にあるマーケティングやブランドのあり方を変えてやろうという潜在意識が働いているのではないか、と思うのです。
こう思っていても、実現できるとは限らない。それも、また世の中ですが、変えてやろう、と思っていない人は、決して、何かを変えることはない、これが世の中の真理だと思います。
「世の中なんて、パッと変わる」このセンスと志を大切にしたいと思います。

ブランディング・ディレクター 宇佐美清

経営者のための新ブランディング・スタンダード #1

最初にすること、
ブランドに関する共通言語を持とう。

世の中が目まぐるしく変転している。日々、というより時々刻々と言っても過言ではない。私が身を置いているブランド・ビジネスの世界でも同様で、このところ身近なブランドの浮き沈みが目立っている。

ブランドは、人びとの気持ちの中に存在する。世の中が動けば、連動して人の気持ちが揺れ、ブランドに影響することも多々ある。この場合、そのブランドが持つ価値を、世の中の揺れ動きに焦点を合わせて変えていくのか、一考しなくてはならない。

同時に、こういう世の中だからこそ、変わらないことを大切にする、という考え方もある。俳人、松尾芭蕉の「不易流行」(ふえきりゅうこう)という言葉。蕉風俳諧の理念のひとつで、解釈はいろいろあるようだが、簡単に言えば「変化しない本質を忘れず、新しい変化も取り入れる」ということだろう。その意をちゃっかり借り受ければ、この言葉はブランドの本質を、うまく言い当てている。

いまお話しした、ブランドの本質を見据えつつ、変化にどう対応するか、というのは単なる一例に過ぎないが、こうした判断をすることは、ブランディングが担う項目のひとつでもある。今の世の中でブランドを所有すれば、近々あるいは、いつかこうした課題に直面することになる。そのスムーズな解決は、経営者の重要な資質として、ますます求められることになるだろう。

さて、経営者がブランディングを成功させるうえで、まずやるべきことは、何だろうか。

私は、経営者がブランドあるいはブランディングという抽象的な概念を理解した上で、自分の言葉で、つまりわかりやすい言葉で定義づけること、文章にして、話せること、そしてそれを企業内の共通言語にしていくことだと考えている。

これは、経営者にとって、数字を見て先を読むことと両翼をなす、もうひとつの大事な資質である。経営者は、会議などの席上で、往々にして課題や方向性などを、ひと言で言い切らなくてはならない。また、自分の企業のビジョンを文章で明確にし、それを伝えなくてはならないからである。

抽象的な概念を、わかりやすい言葉にするには、まず本質を理解することが大事である。次にそれを簡潔で平易な言葉で表すことが求められる。これには、ある程度、その人なりの解釈が入ってもいい。むしろ「らしさ」が出て、解釈があった方がいいとも言える。経営者にとって、言っている内容は同じだが、言葉の使い方が異なることは珍しいことではない。

さらにもう一つ大事なことは、それを社員に浸透させることである。共通言語がなければ、経営者は自分のブレインとブランドやブランディングの進むべき道を議論することが出来ない。充分な議論をかわした上で、さらに誤解のない言葉になっているかを精査して、社員に伝えていく。いずれは、全社員の共通言語にすることが目標になる。

2015年6月8日

次回予告:「ブランドって何?本質を理解しよう、わかりやすい言葉にしよう」

予告!<経営者のためのブランディング・スタンダード>連載

経営者のためのブランディング・スタンダード>という寄稿連載をブラスタで開始します。この「スタンダード」は基準・規範というよりは、経営者が知っていて当然、やっていて当然の、ブランディングに関する「当たり前のこと」を指しています。

対象は、これから自社にブランディングの導入を考えている経営者、あるいは数年前からブランディングの考え方を取り入れている、という経営者の方々です。ブランディングに限らず、何事においても初心は大切ですが、実務上の現実的な課題に直面した時に忘れるのも、また初心です。経営者にとってのブランディングに関する当たり前のこと、最初の一歩として、前向きな振り返りとして、お役立ていただけたら幸いです。

<ブランディングに関するスタンダードな10の質問>

社員から次の質問をされたとします。
あなたはわかりやすく答えてあげられますか?

①ブランドとは何か?
②製品とブランドとの違いは何か?
③ブランドについての認知、理解、関与とは何か?
④企業ブランドと製品ブランドの違いは何か?
⑤BtoB ブランドとBtoCブランドとBtoBtoCブランドの違いは何か?
⑥ブランディングとは何か?
⑦ブランディングとマーケティングの違いは何か?
⑧ブランディングにおける戦略と戦術とは何か?
⑨ブランディング戦略立案の基本とは何か?
⑩ブランディング戦略立案における重要要素とは何か

 

宇佐美清
CATAPULT(株)
取締役ブランディング・ディレクター