最初にすること、
ブランドに関する共通言語を持とう。
世の中が目まぐるしく変転している。日々、というより時々刻々と言っても過言ではない。私が身を置いているブランド・ビジネスの世界でも同様で、このところ身近なブランドの浮き沈みが目立っている。
ブランドは、人びとの気持ちの中に存在する。世の中が動けば、連動して人の気持ちが揺れ、ブランドに影響することも多々ある。この場合、そのブランドが持つ価値を、世の中の揺れ動きに焦点を合わせて変えていくのか、一考しなくてはならない。
同時に、こういう世の中だからこそ、変わらないことを大切にする、という考え方もある。俳人、松尾芭蕉の「不易流行」(ふえきりゅうこう)という言葉。蕉風俳諧の理念のひとつで、解釈はいろいろあるようだが、簡単に言えば「変化しない本質を忘れず、新しい変化も取り入れる」ということだろう。その意をちゃっかり借り受ければ、この言葉はブランドの本質を、うまく言い当てている。
いまお話しした、ブランドの本質を見据えつつ、変化にどう対応するか、というのは単なる一例に過ぎないが、こうした判断をすることは、ブランディングが担う項目のひとつでもある。今の世の中でブランドを所有すれば、近々あるいは、いつかこうした課題に直面することになる。そのスムーズな解決は、経営者の重要な資質として、ますます求められることになるだろう。
さて、経営者がブランディングを成功させるうえで、まずやるべきことは、何だろうか。
私は、経営者がブランドあるいはブランディングという抽象的な概念を理解した上で、自分の言葉で、つまりわかりやすい言葉で定義づけること、文章にして、話せること、そしてそれを企業内の共通言語にしていくことだと考えている。
これは、経営者にとって、数字を見て先を読むことと両翼をなす、もうひとつの大事な資質である。経営者は、会議などの席上で、往々にして課題や方向性などを、ひと言で言い切らなくてはならない。また、自分の企業のビジョンを文章で明確にし、それを伝えなくてはならないからである。
抽象的な概念を、わかりやすい言葉にするには、まず本質を理解することが大事である。次にそれを簡潔で平易な言葉で表すことが求められる。これには、ある程度、その人なりの解釈が入ってもいい。むしろ「らしさ」が出て、解釈があった方がいいとも言える。経営者にとって、言っている内容は同じだが、言葉の使い方が異なることは珍しいことではない。
さらにもう一つ大事なことは、それを社員に浸透させることである。共通言語がなければ、経営者は自分のブレインとブランドやブランディングの進むべき道を議論することが出来ない。充分な議論をかわした上で、さらに誤解のない言葉になっているかを精査して、社員に伝えていく。いずれは、全社員の共通言語にすることが目標になる。
2015年6月8日
次回予告:「ブランドって何?本質を理解しよう、わかりやすい言葉にしよう」