Web検索の研究から考えるブランディング

Web検索の研究から考えるブランディング

私は8年間ほど大学の研究室でWeb検索の研究に携わってきました。Webといえばビッグデータ、どんな有益な情報がそこに埋もれているか分からない、データの宝庫。そんな宝探し的な要素が 魅力的なのか、Web系の研究に関⼼を持つ学生・研究者は増えているように思います。ずばり「ブランド」をターゲットとして直接意識した研究は希有なものの、例えば商品や企業、人物の評判を検索してくる研究があったり、購入履歴などからユーザの嗜好に合った商品を推薦する研究、印象や意味を考慮した自動ネーミングの研究などもあったりします。
「ブランディング、マーケティングにそのまま活かせるんじゃないの!?」という研究は、ブランディングに関わりだしてからつくづく感じるところです。私自身はブランディングについてまだまだ勉強中ですが、研究の経験や知識を基に好奇⼼をそそるコンテンツを提供していけたらと考えております。

商品を評価する-評価情報の研究から-

Webをターゲットにした研究分野の中で、『評価情報』を扱う研究は比較的盛り上がりを⾒せている分野です。コンピュータを使ってWebから評価情報を集めてくる際には、評価情報が曖昧だとコンピュータは困ってしまいます。あらかじめ「評価情報って何?」という点を明確にすることが、評価情報を扱う研究では、まず大事になってきます。何を評価情報とするか、その定義は研究者によってまちまちですが、主には以下に示す式の組み合わせと見なすケースが多いようです。

評価情報=評価対象+評価属性+評価表現

例を挙げますと、このデジカメは値段が少し高い。(評価対象=このデジカメ、評価属性=値段、評価表現= 高い)このデジカメはレンズが明るい。(評価対象=このデジカメ、評価属性=レンズ、評価表現 =明るい) という具合です。ちなみに人工知能や、こういったWebの研究では、「人間ならこうする」という考え方の流れをモデル化して、それをそのままコンピュータプログラムに置き換えていきます。人間に比べてコンピュータは与えられた仕事をより多くこなすことはできますが、誰も思いつかないような発想をして問題解決することはコンピュータにはできないからです。だから、ここで挙げた評価情報も、一般的に人間ならこういう観点で物事を評価するだろうという考え方に基づいています。そのため、コンピュータで扱うためだけでなく、企業活動においてもそのまま利用することができます。実際、一つの評価対象だけ取ってみても、その評価属性は様々です。コーヒーなら味や香りや価格、企業なら業績や成長速度や社会貢献度など、一つの評価対象には多種類の評価属性が存在して、この属性は良いが、あの属性は悪いという多面的な評価がなされます。
ブランドを考えるときは、その商品が持つ機能面や情緒面のベネフィットを整理することが大事なので、ベネフィットを論理的に分析する方法論として、「その商品(評価対象)に対する評価属性となるものは何か?」その評価表現は何か? という3つの要素で整理していくと、ベネフィットの洗い出しがしやすいのではないかと思います。その中で、「この商品はこの評価属性について、こういう評価がされたいのだ」という風に、ブランディングのゴールが見えやすくなるかもしれません。

カタパルト・テクノロジスト 佐々木 智