戦略と戦術

よおーくかんがえよ~。戦略は大事だよ~。

 

10年ほど前でしょうか、マーケティングで世界的に有名な企業の元バイスプレジデントと、長い間定期的にブランディングやマーケティングについてのお話を伺う機会がありました。その人は戦略とは端的に「寝首を掻っ切ること」とおっしゃっていました。意表をつくものでないといけないという意味だと解釈しました。また、その人がコンサルタントとして外資系だが中身は超ドメスティックな企業を担当されたとき、営業担当の部長から「戦略では食えんからなあ」と皮肉られ、短期間で離れたそうです。その企業はその後一時、倒産寸前まで業績が下がりました。

 

多くの企業で「戦略」という言葉に対する拒絶感、拒否感があるように思えてなりません。巷のコンサルタントに、いいように戦略だけ作られて大金を奪取され、ふたをあけたら「あとの細かいことは社内でがんばってください」と突き放され、もう少しやってくださいとお願いすると、あとはこれだけかかりますと,さらにお金をむしり取られる。そんな構図が見え隠れします。

 

これは、コンサルタントに丸投げ、任せっきりにしてしまう日本企業の姿勢もありますが、あまりにも日本のビジネスに戦略と戦術の考え方が浸透していないことが原因とも思われます。戦略・戦術には目的が必須です。もちろんほとんどの企業の目的は永続的に業績を上げること以外ありえません。その目的に到達するための方針が戦略、具体的施策が戦術ということになります。

 

戦略戦術は企業経営においても必須ですが、ブランディング、マーケティング活動においても必須の要件となります。特に戦略なくしては、すべての活動の一貫性は担保できません。戦術は具体的な施策ですから戦略がなくとも成立しますが、消費者から「やっていることがバラバラで意味不明」という評価があった場合は、戦略の欠如、もしくは戦略の理解不足が原因と思われます。また戦略・戦術を明文化することは、やっていることの一貫性を確認できるメリットと、失敗を検証するときに有効な材料になるというメリットがあります。戦略・戦術をきっちり策定したからといって、ビジネスすべてがうまくいくわけではありません。だから失敗したら検証する必要があります。こう表現すると「だったら戦術だけ考えればいいじゃん」という人も出るかもしれませんが、「戦術だけ考える=単発で販促や広告の施策を考える」と理解すると、ビジネスの一貫性や継続性の部分でブレが生じてきます。

 

ビジネスは利益を出すのか損をするのかトントンなのか、究極的にはその3点の中でもがき苦しむ行為だと思います。私も戦略戦術をつくっても、確率的にはどっちかなんだから、そんな面倒くさいこと必要ないのではないかと思うこともありました。しかし、戦略戦術を策定させてビジネスを進めないと、丁半博打をしているのとなんら変わらない感覚になってしまうように思えてなりません。成功の確率と負けの確率が50:50なら51と49でいいから、1%でも成功の確率をあげるための努力をするという行為の現れが戦略・戦術に基づいたビジネスをすることではないかと思っています。