ブランディング・ワークショップと、3つの成功要因

「戦略や戦術をつくる時、どうしてワークショップ形式なのですか?」このような質問を時々されます。そんな時は逆に質問を返します。「そのブランドを一番よく知っている人は誰でしょう?」

正解は、ブランドを所有している人。私たちがブランドオーナーと呼ぶ方々です。ブランドを自分で立ち上げて、世に問うている人たち、企業ならブランドを任されているブランドマネイジャーのみなさんです。 もちろん、私たちもがんばって勉強しますが、ブランドをわが子のように考えて育てている人には、すでに思いの強さでかないません。

このことに気づいて、ワークショップによる合意を大事にしよう、と考えるようになりました。

世間ではブランドを外部からサポートする人がアイデアを考案し、ブランドオーナーに提案して承認を受けると言うやり方が一般的ですね。これは時間も手間もかかるうえに、今さらながら相互の考えの隔たりや、勘違いまで浮き彫りにして、合理的ではありません。私たちのやり方は、オーナーも社員もサポーターも一緒になって、半日、あるいは丸一日かけて、そのブランドのためのワークショップを行うものです。

このブランドのためのワークショップを成功に導く要因は3つあります。

ひとつめは、参加者全員の平等で公平な意識です。その時間はタイトルなし。各々自由に発言して、多様な意見に耳を傾けるブレスト形式で、全てはブランドのためにお互い刺激し合って、一つになる。そういう時間にすること。

二つ目はフレイムワークです。ブランディング7ステップス、略称B7S(ビーセブンエス)と呼ぶブランディング戦略立案のためのメソッドを使って枠組みを組み立てます。B7Sは2006年の拙著「USAMIのブランディング論」で紹介されたもので、いくつかの成功実績をつくってきました。誰でも参加し活用できる、こうしたフレイムワークは、ブランドを世の中で開花させるために、欠かせません。

最後は、ワークショップを仕切るファシリテーターの重要性です。私たちには社員全員がそれぞれの専門性を持って、臨機応変にファシリテーションできるといスキルがあります。アートディレクターもウエッブのデザイナーもこのスキルを持っています。この複数の専門的なファシリテーションの組み合わせが、ブランド理解をより深くし、刺激を多様化して、戦略アイデアへの到達をスピードアップし、確実なものにしています。

戦略立案の後には、そのアイデアに基づく戦術展開案の考案が控えています。それぞれの専門分野を持つディレクターが相互の連携を確認しつつ、全体をファシリテートすることが、効果的な戦術を具体的に生み出すことにつながっていきます。